社会システム研究所
原子力という自然が与えた圧倒的エネルギーを人間が利用するためには、科学技術の側ばかりではなく、原子力発電という巨大装置を構想し設計し建設し、稼働し管理し維持する人間や社会の側を研究することが必要です。安全と信頼の実現のために、一定程度まで予測可能な法則性に基づくモノの研究に加えて、きわめて複雑・不規則で予想しがたいヒトや社会や組織の研究を進めなければなりません。このため社会システム研究所は、心理学、社会心理学、応用心理学、社会学、社会調査法、エスノグラフィーをはじめとして、さまざまな角度から安全と信頼のための研究を行っています。
エネルギー資源の不足、資源コストの上昇、経済発展の基盤の必要性、安全の保障など、日本固有のエネルギー状況があるばかりでなく、グローバルな環境問題、地球温暖化、世界的な電力需要の拡大、資源競争の激化など、中長期的な問題に対処するためにも、柔軟かつ広い視点からエネルギー確保の可能性を追求することが重要となっています。リスクというものは決してゼロにはなりませんが、安全を常に最大化し、さまざまな方法でリスクを管理しうるものとして最小化し、社会的理解と合意に向けて努力していくことが必要です。

小泉 潤二

片岡 勲
技術システム研究所
技術システム研究所では、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓に学び、海外の運転経験や動向にも留意しながら、原子力発電の安全性・信頼性の一層の向上に貢献することを目的に、現場に立脚しつつ科学的な視点から、以下のような調査・研究活動を進めています。
①高経年化対策研究
我が国では運転期間が法律で制限されたとはいえ、原子力発電所を安全・安定に稼動するうえで高経年化対策の重要性に変わりありません。当分野では、先手管理につながる高経年化対策の提案を目指し、経年劣化のメカニズムの解明や予測・評価に関する研究、機器の非破壊検査・状態監視技術の研究を行っています。
②原子力情報研究
原子力発電所の安全性向上に資するため、主として海外の原子力発電所の運転経験や良好事例、規制対応の動向等の情報収集・分析を行い、その結果を電力会社に報告し、必要に応じて、安全対策改善のための提言を行っています。
③安全・防災研究
当分野では、東京電力福島第一原子力発電所事故を教訓に、過酷事故の事象進展予測や影響緩和、原子力防災対応支援に関する研究を強化しました。また、原子力発電所の運転・保守の改善を目的に安全裕度評価に関する研究を行っています。
