刊行物・関連書籍

  • 同文館(2000年 8月4日)
    2,000円(税別)
  • 編著者 野村 宗訓 (関西学院大学経済学部 教授)
  • 著者  松田 年弘 (原子力安全システム研究所
               社会システム研究所主任研究員)
  •  原子力発電所は他の電源に比べると、(1)建設期間が長く巨額の投資を要する、(2)出力一定運転を原則とする、(3)運転終了後に長期間の廃棄物管理が必要であるという特徴を持っている。わが国では2000年3月から電力事業の部分自由化が開始されたが、電力自由化が進められると、上記の特徴を持つ原子力発電事業にどのような影響があるのかという問題については、十分な検討と議論が行われているとは言えない。
  •  原子力安全システム研究所では、競争的電力取引を1990年から段階的にとりいれてきた英国において、原子力発電事業がどのように取り扱われてきたのか、競争市場で原子力発電事業がどのようなメリットとデメリットを抱えいてるのかを調査・分析している(松田・野村,1999,INSS Journal,No6, 66-77)。今年8月に同文館から出版された「電力 自由化と競争」にその結果がわかりやすく説明されている。例えば、英国の大手原子力発電会社の好調な業績が報じられているが、原子力発電事業はすんなりと競争市場に適合したのではなく、英国政府による様々な条件整備が行われたことが検証されている。
     「電力 自由化と競争」の内容は、(1)自由化推進の潮流、(2)電力事業の競争促進、(3)プールシステムの導入、(4)英国の合併・再編成、(5)競争導入効果の検証、(6)制度改革の実行過程の6章から構成されている。
  •  原子力発電の問題以外にも、市場ルールや料金水準、再生可能エネルギーの取り扱いなどの様々な観点から、英国における電力取引の論理や競争移行の実態の理解に役立てていただけるものと考えている。