人的側面に着目する

 原子力発電所では、ヒューマン・マシン・インターフェースの改良や作業環境の改善などにより、運転員や保守員のヒューマンエラーは着実に減少してきているものの、最近はその減少傾向が横ばいとなっており、今まで以上に更なるヒューマンエラー低減方策が求められていると言えます。
 また、産業界では組織の倫理に関連する不祥事などの問題も急増しており、企業倫理、コンプライアンスなどの新たな取り組みが期待されています。さらに、個人の行動は「組織の安全姿勢」と「直属上司の姿勢」などの組織要因により大きく影響を受けていることが当研究所の安全風土調査などでわかってきました。また、事故や災害の根本原因分析においても、組織要因がクローズアップされています。
 原子力発電所の設備は、高経年化の時代に突入し、また新検査制度という新たな枠組みの中で運用していくことになります。このように我々を取り巻く環境は常に変化していますが、今まで現場は臨機応変に対応してきました。これは人間のプラス面と言えます。それに対して、人間と環境のミスマッチによりヒューマンエラーが起こったり、大きな事故に進展したりもします。これはマイナス面にあたります。当センターでは、人間のプラス面を伸ばし、マイナス面をできる限り小さくするための広範囲の研究に取り組んでいます。
 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とその後の津波、そして東京電力福島第一原子力発電所事故は、国内外に大きなインパクトを与え、今後のヒューマンファクター研究活動にも新たな視点が必要となりました。今までの研究を振り返り、開発してきた分析・評価手法などの高度化研究や、緊急時における組織のあり方など緊急時を想定したリスクマネジメント研究の分野にも挑戦しています。

  • ヒューマン・ラボでは、今までに指差呼称の有効性確認実験や騒音の影響緩和実験などを実施(写真は指差呼称実験)

主な成果 – 書籍・冊子

グループ

  • ヒューマンファクター研究センター
    人間行動グループ

    原子力発電所におけるヒューマンエラー低減やヒューマンパフォーマンスの向上のための、人間の行動に関する研究
  • ヒューマンファクター研究センター
    組織文化グループ

    原子力発電所などの組織や文化の調査に関する高度化・標準化、および組織文化の改善に関する研究